蕎麦に入れ歯

情報は、タダじゃない。

有益な情報は、取得することにそれなりの努力を要する。その努力を回避して、簡便に情報を取得しようとするなら、当然その対価は支払うべきだと思う。
そうなのだけれども、無料でダウンロードできるソフトが多くて、「これって、一体どうやって、開発費を回収しているだろう」と思えてしまうソフトも、中にはある。万人をターゲットにするから、「有償」を選択する確率が低くても、ペイするんだろうか。「課金」する一部のユーザに頼っているのか。

マーケットの「ニッチ」なる、耳障りのいい言葉がある。要するに、市場規模が(今は)小さい、ターゲットに金銭的な余裕が少ない、求めているのが中小以下の製造業とか、病人、文科省が方針転換して見捨てた基礎研究部門だとか、そういうところを相手に仕事をしていたら、需要が多くても単価が上がらない。
結局は、いずれ供給が止まるのかも知れない。

安倍総理の「景気対策」は、頂点となる大企業に金を注げば、それが下まで流れていって、下請け孫請けまで潤うと、そういう構図を描いたんだろうけれども、結局は上の方で給与やボーナスが上がるだけで、下までは潤っては来ないのかも知れない。
そもそも、供給する側が必死でモノを作っている、だからモノが溢れているという認識があまりないのか。コンビニなどで売られているモノは、誰がどうやって「この値段」で作っているのかと思うと、気が遠くなる、ことがある。相当な数を作るから、一個あたりいくらの利益が乗って、ビジネスが回っているんだろうか。(今ごろになって、やっと気づいたのかよ、とも思うが。)

情報もそう。漫画村だっけか、タダで読めて当たり前?何もないところからモノを書く、「創造」するのにどれだけ消耗するか、想像できるんだろうか。「タダで読めるんだから、有料サイトなんか使わない」いずれ、新しいものは供給できなくなるんじゃなかろうか。「え?金とるの?」って、どういう認識?多いんだよなぁ、そういう人。

最近は、何でもない普通の会話だとか、何気ない発言の一部分を切り取って、それを「ニュース」として配信したりする。その極みがフェイクニュースなんだろうか。文脈で読まなければ真意は伝わらない、そういうものが多いのに、切り取った一部分だけを見て、「炎上」というんだろうか、大騒ぎになったりしているのを見ていると、もしかして、これも「コンビニ世代」の「お手軽さ」で、ニュースを受け取っているのかなぁ、とも思う。そうかと思っていたら、韓国はレーダー照射の証拠映像に対して「画像と会話しか写っていないから、証拠にならない」と言っていた。その部分だけを切り取れば、そういう主張ができるんだろうか。切り取ってしまったら、真意など伝わるはずがない。

そう言えば、師匠が講演会でおっしゃってた。創造主が、人間の住めるこの環境全てを創った。ところが、人類はそれが「ひとりでに出来上がった」と勝手に考えて、感謝を忘れている。そんな文脈だったと思うが、そもそも、コンビニで売られているものも、漠然と、誰かが作ったなんてことは考えて買ってない。漫画はタダで読めて当たり前。誰かが必死で考えてその作品を産み出した、なんてことは多分全く考えていない。
「そこにあるんだから、誰かが作ったなんてことはないと思う。」前にも引っかかったこの一言、コンビニ世代の当たり前の生活感覚、なんだろうか。納入したソフトを「タダにしろ」なんていう、あれとはまた別の感覚なのか。
断片的に切り取られた、目の前のモノにしか反応しない。上流工程も、下流工程も、一切気にせずに、目の前に何かモノが存在している、それだけを相手にしている。会話も映像も、流れを見ずに一部分だけを切り取って騒ぐ、あるいは、一部分だけを切り取って、意図的に相手の真意を切り捨てる。なんだか、どんどんそこにシフトしている気がする。嫌な世の中だ。

昔、僕らの世代のアイドルは、山口百恵さんとか、小柳ルミ子さんとか、アクネス・チャンさんとか、男性だと沢田研二さんとか、郷ひろみさんとかだった。山口百恵さんの歌に「青い果実」か、こんな歌があった。

あなたが望むなら 私何をされてもいいわ いけない娘だと 噂されてもいい

萩本欽一さんのテレビかラジオの番組(たぶんラジオ)で、歌詞のパロディを聴視者が投稿するのがあって、この歌の途中を切り取って、流していた。
「蕎麦に入れ歯 蕎麦に入れ歯」
この後、「誰も怖くない」と続く。知らない方は、是非最初から聞いてください。別に、年越し蕎麦に店主の入れ歯が入ってる訳じゃない。

切り取っちゃうと、こうなるんだよなぁ。なぜか印象に残っている。しかも今時は、それで炎上したり、逆に、切り取ることで前後の文脈を全部断ち切って、なかったことにしてしまう。
モノは、作った側のことも、使った後のことも何も考えない。超狭視野の繋がりの乏しい世の中にシフトしているような、そんな気がする。