穴馬

敵の敵は味方、ということなんだろうか。
「共通の敵」を前にすると、連帯感が生まれる、ものらしい。文政権と金正恩氏の北朝鮮にとって、明らかに日本はこの「共通の敵」であるらしい。
北朝鮮にとって、文大統領が頼みの綱であるとしたなら、北朝鮮メディアが日本のことを良くいう筈がない。残念なことに、拉致日本人の問題は「その存在を認めること」すら、希望薄な気がする。

文大統領の韓国、そして北朝鮮の両方に共通する「特徴」は、「事実」をメディアが公表することができない、という点だろうか。そもそも両者とも「歴史的な事実」など大して重要視していない。国民に「何をどう思わせるか」だけが重要という、日本にとっては非常に厄介な問題が、両国に共通している。韓国の場合、それは韓国が民政化する前の軍政当時からの教育が根付いた結果として、そう簡単に変えられるものではないだろうし、北朝鮮の場合には、「真実」を国民に伝えることなど、致命傷になりかねない。日本による両国への「関与」は、事実を拾い上げたら必ずしも「良いこと」だけではなかったが、両国にとって都合の悪い「歴史」は、何一つ国民に伝わっていないんだろうと思う。日本は永遠に「共通の敵」のようだ。

そこへ、このニュース
米に「北朝鮮亡命政府」、脱北エリートが樹立計画
http://japanese.donga.com/List/3/01/27/756266/1

最初、ニュース配信の見出しだけ見た際、中国がバックアップするのか?ついに中国も、北朝鮮を見限ったか、と思った。配信記事をよく読んでみたら、ワシントンで樹立するとなっている。となると、これはちょっと、無視できないと思った。
北朝鮮の人権問題は、世界的にも知れ渡っている。既に25年前、パプアニューギニアにいた頃に、州政府の同僚が何かの話題で「北朝鮮みたいな国」という表現を使っていて、え?と思ったことがある。PNGはオーストラリアの影響を強く受けているから、ピジン語の新聞や、英字新聞でも、確かに北朝鮮が問題の多い国だという認知は、PNGの知識層には広まっていたんだろうと思う。その国の「民度」の変化は、メディアが担う。マスメディアが使うフィルタによって、民度は高くも低くもなるように感じる。北朝鮮はニューギニア人から見ても「好ましくない劣った国」だった。

北朝鮮が、そう簡単に核を手放さない、としたなら、既に2回の米朝会談を終えた今、トランプも表立っては動けない上に、欧米もそう簡単には金正恩を容認できない、そのタイミングでの「時が来た」は、目を離せないかも知れない。
つまり、トランプ政権になって、一気に北朝鮮との距離が縮まった、その逆も起きる、ということではなかろうか。

韓国が文政権になった途端に、日本との慰安婦合意を覆した。トランプ政権になった途端に、京都議定書から離脱したり、大幅に流れが変わった。それでは、トランプが次期大統領にならなかったら、米朝会談の「成果」は次に引き継げるのか、これが問題だろうと思う。朝鮮半島の非核化に何も「具体的な動き」がなかったなら、引き継ぐべきものが何もない、ということになる。トランプ自身が、北朝鮮の譲歩を引き出せなければ、制裁の解除自体が次の選挙戦の足かせになる、と判断したんだろうか。この流れの中で、北朝鮮への経済制裁を解除すべき口実が何かあるのか。金正恩体制が継続することに、中国は何らかの「メリット」を見出しているのか。ロシアの場合は、どうなんだろうか。つまり、「北朝鮮の亡命政権」に北朝鮮の人材が集まってきたとしたなら、それでも金正恩体制の後ろ盾となるメリットが、中国にあるか、ロシアにあるか、ということになるんだろう。ロシアにとっては、アメリカに近い「新体制の国」が半島北側にあることは、好ましくないに違いない。「旧社会主義国の連携」は、「反米連合」に形を変えて、ロシアを核としてイラン、シリア、ニカラグアを連携させ、北朝鮮をその連携の輪に取り込もうとするんだろうか。そこに少し距離を置いて中国?

「敵の敵が味方」という論理ならば、金正男氏の長男を擁護する「北朝鮮亡命政府」にとっては、日本は味方になり得る存在、かも知れない。金正恩が、再び核やミサイルをチラつかせれば、明らかに「敵の敵」ということになるが、仮に日本にその意思がなくても、北朝鮮が勝手に日本を敵対視しているということは、日本の意思に関わりなく、日本は「亡命政府」にとって、敵の敵になる。
間違いなく言えることは、金正恩氏が拉致日本人を返す可能性は極めて低いが、「亡命政府」が金正恩から「政権」を奪い取った場合には、日本と友好な関係を築くために、拉致問題の全面的な解決に協力してくれる可能性が、極めて高いような気がする。つまり、日本にとっても「北朝鮮亡命政府」は、貴重な「交渉可能な相手」となるように思う。文大統領も、金正恩氏も、「歴史的事実」を持ち出しても、そもそも日本的な感覚で「史実」を正確に認識した上での交渉することが、もはや、両国とも両国国民の手前不可能な状況に陥っている。少なくとも「亡命政府」には、まだそれがない。「事実に基づいた判断」という西側諸国で一般的に「正しい」とされている感覚で交渉が可能だ、ということだろうか。

そして、トランプが次期大統領になりそびれて、北朝鮮がアメリカとの「終戦」の糸口を失った時、おそらく中国は「金正恩の北朝鮮」を堅持するためになりふり構わないバックアップを行うんだろうか。その北朝鮮が、再びミサイルや核の保有をチラつかせた場合、中国はどんな選択肢を取るんだろうか。
もしかして北朝鮮の「西側化」を受け入れ、アメリカとも良好な関係を持とうとして、切り捨てるか、それとも、あくまでも「特別扱いしたいのは経済関係だけ」とばかりに、「金正恩の北朝鮮」をバックアップして、ロシアを核とした「反米連合」に加担するか。
トランプ後に世界貿易はどうなるんだろうか。中国やロシアが、「経済」で世界に関わろうとしている時、日本に何ができるんだろうか?イギリスのEU離脱のような、各国の「揺れ戻し」は、続くんだろうか。

グローバル化する経済、全てがボーダーレス化に向かって動いているようにも見える。好ましいか好ましくないかに関わらず、変化に対しては変化抵抗がある。何かが変わろうとしても、「変わりたくない、変えたくない」という心理的な反応が必ず出る。機械系で言えばダッシュポット?オーバーシュートというのは、こんな感じの波形。


ステップ入力(ベースラインが、0→1に変化した)のを、インターネットの普及だとしたら、上向きのオーバーシュートは、氾濫する(信頼性の低いものも含めた)仮想通貨だとか、「行き過ぎ」の部分だと自分は見ている。下向きのアンダーシュートは、各国で起きている「内向き」の変化、各国の右傾化、などだと思う。
http://ysserve.wakasato.jp/Lecture/ControlMecha1/node15.html

イギリスによるEU離脱が、イギリスにとって「良い結果」をもたらすと思うか?ホンダの撤退はおそらく正解。グローバル化への逆行は、アンダーシュートとなって現れる。ただ、十数年、数十年かけて、オーバーシュートもアンダーシュートも落ち着いて、一定のレベルに安定していくに違いない。

「未来」を操作することなどできないかも知れないが、できることがあるとしたら、このグローバル化後の安定ラインに、どんな「要素」を付け加え、取り除くかという「人類共通の意思」の形成のようなものだろうかと思う。
例えば、グローバル化後の世界に「軍事的均衡」を関与させるか、させないのか、もし国境を超えた世界的なコンセンサスが持ち込めるのなら、人類が望むようになる、と思う。それは、例えば、草の根の運動のような民主主義が勝利するのか、各国政府、特に超大国の政府がしがみつく「軍事的均衡」という自国の優位性なのか、どう変わるかは、「望む」か「望まないか」だけの違いかも知れない。
また、「望む」多数派がどちらの多数派か、も、大切なんだろうな。トランプ政権は、アメリカにとってトランプを望むのが多数派だった。歴史は、そういう変え方もするんだろう。

歴史のことは歴史に聞け、なんていう言い回しがあったっけか?なんだか、あったような気がする。
北朝鮮の「亡命政府」は、もしかしたら、既に拉致被害者帰国の「穴馬」的な存在かも知れない。いつ、どんな形で、「対抗馬」となり「本命」になるのか、目が離せない気がした。