小京都

わが、埼玉県小川町は「武蔵の小京都」の別名があった、らしい。おこがましい気がするけれども。
時間軸をずらすべき、なんだろうな。

「木」の町。都幾川などの木材を切り出し、集積する。日本家屋の柱であったり、あらゆる日用品の素材であり、木材加工は紛れもなく、「住」を支える基幹産業の一つだった。
それが、ラワンやチークなどの南洋材に押され、日用品の素材はプラスチックに置き換わり・・・完全に斜陽化した。

「絹」の町。木綿に並び「衣」の素材として、特に絹は高級な衣類の素材として、輸出もされた。花形産業だった。「衣」を彩る基幹産業。
それが化学繊維に置き換わり、養蚕などに手間がかかるために衰退したのか。今はもう、跡形もない。

「紙」の町。世界遺産に登録された「細川紙」。だけど、何と言っても「遺産」だもんなぁ。完全に現役を退いている、っていうことで。
墨を擦って文字を書き記す。書物は紙でできている。紛れもなく文化の象徴。万葉集を編纂した仙覚律師は、紙の生産地だから小川町に住んだということもあったらしい。文化的格調の高さへの誇りもあった。
それが、大量印刷に適する洋紙に置きかわり、さらに昨今はペーパーレスなどと、完全に過去の遺物。

そして「酒」の町。これは今でも、かろうじて町の名産として残っている。「食」を彩る贅沢品。
だけれども、昨今は「とりあえずビール」
ちなみに、小川町には「乾杯条例」というのがあって、町内の会合では乾杯では「とりあえず日本酒」にしましょう、と。結構、条例違反の会合も、多いような気がするが・・・

ただ、紛れもなく、昭和初期まではいずれも生活、文化に欠かせない素材を作り出し、生活に彩りを添えていた基幹産業を有し、商工業に賑わう文化的な町だった。「衣食住」の中心やら彩りを支え、文化活動を支える基幹産業だった木、絹、紙、酒などを生産し、「武蔵の小京都」を名乗っていても、何一つ恥じることのない栄えた町だったんだろう。ただ今はもう、時間軸がずれてしまって、「武蔵の小京都」なんて言えば「どこが?」ということになってしまう。残念ながら、反論などはできないと思う。戦後の「高度成長以後」だろうなぁ。

「酒」には日本酒ブームが来た(もう去った?まだ去ってない?)それに、今やSAKEは世界的にも知られるようになった。

で、「木」と「紙」は、もしかして再び「日用品の素材」としての地位を狙える状況になった?プラスチックが生態系を脅かす、なんていう今のブーム。昔と同じ形で、というのは無理だろうけれども、工夫次第でリバイバルがあるのかなぁ。この辺、発想が古いと、多分ダメでしょうね。新しい切り口を考えないと。

別に昔のように「小京都」を名乗れるほど栄えて欲しい、というよりも、「衰退した町」というのは嫌だなぁ、という程度だけれど。

話は変わる。
今日も製造業のお仕事。色々と話が出たけれども、すごいと思ったのは、今でも使われている工作機械の制御用コンピュータのOSが、Windows XPなんていうのはまだいい方で、Windows 98/95のマシンをなんとか更新して、フロッピーディスクに大量に保存されている工作データをサーバに移し替え、WEBアプリで選択したデータをRS-232Cで工作機械に転送、なんていう話。このギャップ。
要するに、中小までの製造業だと、生産設備を更新する余裕がなく、「1円でも安く」なんていうお客様の要望があればそれにお応えして、ついに、Windows 95のマシンをこれまで使い続けた、と、こういうことのようで、ここまで極端なところは少ない(?少なくない?)にしても、なんだか大差がないみたい。
「すごいですよね」とボヤいたら、営業さんに「紙テープを使わなくなっただけ、上等」なんていうお返事が返ってくる。若い人たち、紙テープなんて知らないでしょ?RS-232Cは?
普通のシステムハウスだと「背景」から説明が必要になって、それこそ3人月かかるなんて仕様でも、僕が現役バリバリの頃の技術だから、たぶん、そんなには時間がかからない。この時代の技術だったら、このページを書くのに1時間みたいなペースでプログラムを書けるから。
(その代わり、きちんとテストしてから納品しないと、「炭酸ガスと水が反応して、重炭酸イオンと水酸イオンが」なんていうバカなことを書いたりもする。粗忽ですから。テスト手順書もきちんと書かないと・・・)

でも、紙テープかぁ。初代ウルトラマンの時代、科学特捜隊の「本部からの指令」なるものが、紙テープで通信機器から吐き出されて、「怪獣が現れた」なんて言ってるアレ。是非、ご覧ください。紙テープのビットパターンを、隊員が普通に読んじゃうところが凄い、と、今改めて思ってしまうけれども。

産業政策に不備があったんじゃないの?なんてことは思う。安倍総理の政策が歴代の産業政策を象徴するかもしれない。中心動脈圧を上げて、循環血液量を増やせば健康になる?とんでもない。細動脈を開いて、毛細血管が一定以上拡張するようにしなかったら、動脈瘤の破裂だの、脳梗塞、心筋梗塞だの、最低でも高血圧症になるだけ、じゃないかと私は思う。毛細血管レベルがボロボロだったら、全身で考えた時にもう先がない。私はそんな気がする。
ITなどの新しい産業が育っている?そうかなぁ。その結果が、セブンペイの問題でしょ?セブンアンドアイ・ホールディングスが委託するような会社、ですら、あんな設計をする?別に、GPIBの知識も、セントロニクスインターフェースの知識も要りませんよね?新しい技術だけを使えばいいんだから、簡単だろうに。育っていて、これ?全然育ってないんじゃない?

最低でも、全身の細胞の新陳代謝ができる程度に、末梢にまで栄養が行き渡る余裕を持たせなかったら、大企業がギリギリまで下請け・孫請けの売値を削るならば、多少は行政が干渉することも必要だったんじゃないか、という気がする。
確かに、国内で安く作れないなら、海外の「安い人件費」で生産するしかない。その理屈も一理あるけれども、国家としての持続性を考えたなら、「海外進出を応援」ばかりするのも、程度の問題ではないかと思う。単純な問題じゃないことはわかっている。私には答えは提示できない。(経済学者に任せるしかないんだろうな。)
そうでないとなぁ、大企業の「1円でも安く」に答える中小零細企業の、そこからさらに仕事を請け負う私など、どうなっちゃうの、という感じがありまして。いや、普通5人月くらいの仕事を1人月で仕上げる、それくらいペースを上げないと、「持続可能」にならない。持ち堪えられない。余裕が欲しい。

今日の業界は、過去10年、大半が中国に流れて出ていったみたいで、国内に残ったのは「多品種少量生産」で、単価は多少高くても数が少ない、とおっしゃっていた。サバイバル。

じゃぁ、って言って、その中国。たぶん、10年後の設備環境は、今の日本と似たようなことになり、主要な仕事をマレーシアとかベトナム、タイに奪われるんだろうか。そして、さらにその15年後、2045年とかになると、今の日本と同じことがベトナムやタイでも起きる。その可能性が大きい。「安く」するだけで、細胞の新陳代謝を「脳」が制御してくれなかったら、アレだなぁ、なんちゅうか、本中華。(すみません、ジジイです。)よくわからん。

さらに言えば、案外この「毛細血管」が、今後は海外の低所得層も関係してくるかも。

アンコールワットはそれ自体が観光資源みたいだけれども、わが「小京都」にはほとんど観光資源がない。