保身

【声明全文】ゴーン被告「私はレバノンにいる」渡航禁止も出国
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191231/k10012232821000.html

なんだか、思ってしまったことがある。人は、なかなか自分の「行動パターン」や「思考パターン」を変えられない。
彼の「違法出国」は、誰の目にも明らかだし、彼自身も否定はできないだろうと思う。
それを、彼は「日本の不公正と政治的迫害」に責任転嫁した気がする。

日本の司法制度は、国際法や条約のもとで守らなくてはいけない法的な義務を目に余るほど無視しています。

誰の目にも明らかな違法行為を正当化した、実は、それと同じことを日産でもやっていて、無罪の主張が認められそうにないから、同じ発想で逃げた、ということのような気がした。今回やったことは、もう間違いなくそれ自体が違法でしょ?と思うのだが。
メディアへの主張も、同じ枠組みの中での「正当化」の繰り返しなんだろうという気がする。

ゴーン氏が着任して間もない頃、日産自動車の技術系の社員だった友人がいる。
彼の一言を思い出した。
「リストラ」っていうのは、Restructuring、つまり「構造を変える」ことを意味しているはずで、本来「首切り」の意味ではなく「構造改革」のはずなのに、ゴーンさんはどんどんと首を切ってる。大胆に首が切れれば、経営状態が回復するのは当たり前で、日本人の経営トップはそれをする勇気がなかったから、外から「首切り役人」を引っ張ってきたんじゃないか。
確か、こんな主旨だったと思う。
実際、彼もその時期に日産を離れている。

恐縮ですが、彼の主張の根拠を僕は調べていない。どの程度「理不尽な首切り」をしたのか、それが不可避だったのか、日産にどの程度無駄があったのか、知らない。ただ、結構な規模の「退職」があったらしい記事は、何かで読んだうろ覚えの記憶がある。

もう一つ、彼から聞いた話を思い出した。
研究開発部門で、5万円だか、10万円だかの備品を購入するのに、「ゴーン前」はざっと30個程度の「承認印」が必要だったらしい。担当部門の主任、係長、課長補佐、課長、経理部門の誰それ、工場の誰それ、30個?よくわからんけど、まさか社長決済じゃないだろうな、とは思うんだが。で、結果的に「稟議書」というか、「購入申請」を出してから、全部ハンコが押されて戻ってくるまでに3ヶ月とか半年とかかかっていたらしい。その間に、ホンダとかトヨタだったら、もうその「備品」を使っての実験の結果が出ているに違いない、という文脈で、彼は話してくれた。
ちなみに、僕の務めていた大学でも、ちょっとした(確か10万円を超えたあたりだったか)購入でも、学長決済にまで上がっていたから、面倒って言えば面倒だった。っていうか、僕が勤め始めた時は、常勤講師の「年間研究予算」が10万円だったから、学長決済にまで上がる書類は出しようがなかった気もするが、もう、細かい数字を覚えてないなぁ。

首は切らない、構造は変えない、決済のルールも見直さない、誰かが手をつけなければならないのに、「手をつけようとしない」人間ほど出世して、上に上がって高い給料をもらう。そういう「保身」が最大の「価値」につながる会社っていうのは、確かに今でも存在しているんだろうけれども、その結果どうなるか、っていうのは、結構あちこちで今、ボロが出ているんじゃないだろうか。

変えるべきものを変えろと、主張する人間を(無論、論拠の緻密さは検証する必要はあるんだろうけれども、)重用するような組織でないと、長続きしないんじゃないか、という気がする。それなのに、(僕の場合には、「指摘」というよりも「悪口」だから、干されても煙たがられても、文句はないけど、)上に「異論」を唱えれば、干される組織が多い気がする。みんなそれがわかっているから、自分を守るために、一切「おかしい」と言わない。それが日本の社会の病根だという気がしなくもない。まるで、中国共産党みたいな会社や組織が、至る所に存在している気がする。
どれほど「正しい」と自分で思っていても、それを会社なんかで主張するのは、結構勇気が要るでしょうね。でもそれができなければ「保身」ということになる。間違っていてもいいから、「正しい」と思うことは、どんどんと口にできる、上司が部下から、面と向かって非を唱えられても、その主張が正しければ受け入れるし、間違っていたとしても、間違いを指摘した上で、主張したこと自体にはマイナスの評価をしない、そういう組織自体の「リストラ(再構成)」が必要なんじゃないか、という気がする。

しばらく前に絶句したのは、経産大臣の「石炭火力発電の選択肢を温存したい」発言。変える気がない。そのビジネスにしがみついている人たちに、何もシグナルを送れない。そういう人が大臣になる。それでも、日本人は自力で「最適な人間」を選べない。そうやって、ゴーンさんは日産にやってきたんだろうけれども、国がおかしくなったらどうするんだろう。
若い人たちは政治に無関心だから、最後は、国のトップにゴーンさんみたいな人を迎え入れる?きっと、バッサバッサと、切ってくれると思うな。
以前、西武鉄道が、海外の「資金提供元」に、「西武秩父線は廃線にしろ」とか言われた、そんなニュースがあった。海外から見たら、切れる「無駄」はいくらでもあるんだろう。自分たちで変えられなければ、いつかきっと、外から来た人が変えてくれる。自分たちは、いつまでも保身で固まって、黙っていたらいい。いつまで続くかなぁ。

だから、一概にゴーンさんだけを責める気もないけれど、なんとなく僕は、エンロンの「事件」の顛末、エンロンの経営者を思い出した。あのエンロンの経営者も、マスメディアには「絶賛」されていたみたいだ。

「基本的人権が満たされていない日本の司法環境」みたいな表現があった気がする。もしかして、それって、留置場とか刑務所のことなんだろうか。ゴーンさんの感覚っていうのは、冷暖房完備で、風呂やシャワーは毎日自由に使えて、食事にはステーキなんかも出てきて、留置場や刑務所であっても、それができなきゃ「自分の人権が侵害されている」っていう感じなんだろうか。

確かになぁ、日本も細かいところにお金が回っていない。保育士さんとか、介護関係とか、小中学校の教員とか、労働量と賃金とのバランスが問題視されていて「法を犯していない」人たちの生活でも、問題は山積している訳で、ましてや、留置場とか、刑務所とか、そういった所の「生活環境改善」に、どの程度お金が回せるのか、あまり回せないんだろうな、とも思う。だとしたら、ゴーンさんの主張も、わからんでもない。
それっていうのも、何億、何十億っていう給料をもらっていても、所得を少なく見せかけたり、一円でも多く自分も懐に入れたい人たちが少なくないから、どうしたって税収も頭打ちで、当然、留置場とか刑務所の環境に回せるお金は少なくなるんだろうなぁ。一義的には、ゴーンさんみたいな人に、もっと課税できないと、留置場の環境改善もできないんだろうなぁ。ゴーンさんに、何か言う資格あるの?

来週から、メディアに何を主張するのか、楽しみだ。「出国管理を通さない出国」が「法を犯していない」とでも主張するのかな?