センブリ

テレビの罰ゲームで
よくオーバーなリアクションをしている苦いお茶
体にいいというコメントも聞いて
もしかしたら ボクの知ってるアレかなと思った

アマゾンからセンブリが届いた
すぐに煮出した

舌に絡みつくような苦さ
この味 覚えてる
やっぱりそうだった
これだ

食卓には おじいちゃんがいた
おばあちゃんもいて おかあさんもいた
おとうさんもいたかな
いたかも知れない

おじいちゃんが胃を壊して
苦い薬を飲んでいた

おばあちゃんが やかんに薬草を入れて
長い時間煮て 煎じて
やっと出来上がった黄色い薬が お茶碗に注がれていた

「お前も飲むかい」と聞いたのは
おじいちゃんだったか おばあちゃんだったか
うん と答えた

おふくろが笑っていた ような気がする

にが〜い と言ったけれど
たぶんボクは あまり表情を変えなかった
舌にまとまりつくような苦さは しばらく残った
その後ボクは 三ツ矢サイダーを飲んだ ような気がする

この時と
ものすごく似た景色も思い出した

夕食の前に
おじいちゃんが コップに入った ちょっと黄色っぽい
だけど あの苦い薬よりはずっと薄い色のお水を飲んでいた

あの「お前も飲むかい」を思い出して
ボクはコップに手を伸ばして 飲もうとした

おばあちゃんが あわてて
「それは お前は飲んじゃダメだよ」と
コップを取り上げようとした

こういう場面で いつも意固地になるボクは
コップの水を すぐに一口飲んだ
苦くはなかったけど 変な味がした
すぐにお腹のあたりが 熱くなった
じきに 顔もポッポと熱くなった

この時は おばあちゃんが
ちょっと不安そうに でも笑っていた ような気がする

良薬は 口には苦かったけれど
心には とても甘かった

ボクの命は
おとうさんやおかあさん
おじいちゃんやおばあちゃん
そのまた上の ひいおじいちゃんやひいおばあちゃんから
受け継いだ命

ボクも胃は あまり強くない
でも これでまだ がんばれるよ

もうあと何年かしたらボクは
あの時のおじいちゃんと 同じトシだよね