旧薬事法

30年近く前、医学研究用の信号処理アプリを書いていて、取扱説明書に「診断」という言葉を使ったときに、カスタマーエンジニアの方に指摘を受けた。薬事法で、「診断」とか「診察」とか医療行為の決定権を思わせる表現は使えない、らしい。決定権があるのは医師のみ。細かいところは覚えていないけれども。

一つ前のページ、人工呼吸器の自動化は、技術的にはそんなに難しくないはず、という話題を書いたけれども、おそらく、とっくの昔に技術的にはそれが可能になっていたのではないかと思う。ただ、あくまでも人工呼吸器を操作する、あるいは、操作の指示(呼吸流量、酸素濃度などの設定指示)を行えるのは医師のみで、臨床工学技士も医師の指示で操作するだけだったように記憶している。法改正とかあったのか、確認はしていません。古い知識ですみません。旧薬事法が改定された時期、非常勤その他合わせて週15コマ近く拘束されていて、世間のニュースなどに首を突っ込む暇はなかった。

実際に、自動化は難しい。学内の実習で、学生に自分の胸に心電図の電極をつけさせて、不整脈解析のアルゴリズムを走らせたら、3分の2近くの学生に「異常」が出た。中には「心筋梗塞の疑い」なんてのもあった。だって、電極の装着位置が、肋骨1本分ずれていたり、脇の下の「真下」が背中の方にあったり、(さすがに、乳首が背中にある人はいなかったけど・・・)もう、電極の付け方を間違えたらどうなるか、という標本みたいな騒ぎ。適当に話を聞いて、適当にやってる学生もいたに違いないことを考えると、「だから危険」とは言い切れないけれど、(おそらく、PCR検査を現場でやってる人も似たようなことを言うに違いないけれど、)ベテランならあり得ないようなちょっとした不注意で、「検査結果」には重大なエラーが出る場合がある、ということかも知れない。

だからと言って、「自動化は絶対危険」とも言い切れないんだろうな。現実に、「自動運転車」の実証試験が始まった。そして、アメリカでは自動運転車による死亡事故の(たぶん)第一号が発生した。僕自身は、臆病でもあるし、やはり「慎重に」とは思うけれども、でも、どこかで前に進まないと、多少の事故が起きたなら、そこからフィードバックをかけて技術を磨き上げるという流れにしていかないと、いつまで経っても進歩はないのかも知れない。加えて、相当にボケが入った高齢者の運転する車より、自動運転車の方が安全だったりするかも知れないし。

と、いいつつ、今のこのコロナ禍で、慌てふためいて「人工呼吸器の自動化」なんて動き出したとしても、安心して現場で使えるようになるには、やはり1年以上とか、かかるかも知れないし(ワクチン開発と違って、その気になれば1ヶ月もあれば十分、という考え方も成り立つけど)・・・。今更ながらだけれども、可能性があるなら、一つでも新しいことを試す、ってのも、必要かも知れない。家庭で安心して使える「人工呼吸器」があったなら、救えた命が今失われているのかも知れないし。

いずれにせよ、法律が「医師の指示のもと」で全てを回すようになっている以上、現場の医師がどれほど忙しかろうが、指示は出してもらわないと命は救えない、っていうことかも知れないし。

似たような話は、社会のディジタル化でもあるのかも知れない。「はんこ」がディジタル化の障害、ってのが、なんだかあまりにも・・・それで、「ハンコ」を押すために出社して、感染して、なんてことも、現実に起きつつあるんだろうな。

なんだか、大昔の話を思い出してしまった。以上。


追補:(なんか、仕事に集中できない。もう、ここ数ヶ月ずっとだ・・・)

ふと、気になった。菅総理が「国民皆保険」の制度に言及して、ネットでボコられていたけれど、「民間病院」にコロナの受け入れを求める話の流れで、医療制度の根幹から見直さないと対応できない、という話からではないか、と書かれた配信記事があった。(ググったけど、見つけそびれた。)

おそらく、だけれども、「自由診療の枠内」で、(表現が露骨でごめんなさい)「お金さえ積めば、民間病院に受け入れてもらえる逃げ道」を用意しようとしたなら、この「国民皆保険」の制度そのものから見直さないと、なんていう、結構制度設計上の高度な話題が、どこか水面下で出ていて、そこからつい「国民皆保険」の単語が外に出てきちゃったんじゃないかな、なんて、ふと、そんな気がした。

中規模程度の民間病院なんかだと、コロナ患者の受け入れは、ただでさえ「受診控え」で患者数が減っているところに、致命的に「一般の患者が来なくなるリスク」を抱えることにもなる。本音として、申し訳ないとは思うけれど、という感じだと思うけれど、背に腹は代えられない、そう簡単には受け入れられない、ということなんじゃなかろうか。

この辺もたぶん、制度とか法律上の問題なんだろうな。だから「皆保険」にまで話を掘り下げたに違いない、と思った。

なんて、他人事みたいな書き方でごめんなさい。自分に降りかからないと思っている訳じゃなく、(協力隊時代と同様に、)可能な限りリスクを避ける行動は取るけれど、万が一になっても、私は何も思い残すことが、ないなぁ、なんて気分なんで、そんときゃそん時。何が起きても受け入れる、と、心の準備は大切だと思います。